介護の一工夫
ケアコート日誌

暮らしの継続

“暮らしの継続”
私が、この仕事に就いていなかったら、この言葉に、何かを感じることは、無かったかも知れません。

「“暮らしの継続”だって? 当たり前のことじゃないか!」・・・と

私は「ケアコート武蔵野」の一職員です。
入居される方の事情や、入居までの経緯は様々ですが、慣れ親しんだ自宅を離れることは、多くの場合「大きな自己断念」を伴うものです。

私たち介護スタッフは、その「自己断念」の最中に出会う人の一人となりますが、その時期に、どのような人に出逢うかによって、入居者様の人生と生活は大きく変わるものだと考えます。

前述のお話は、最近、全職員を対象とした会議の中で、施設長が話していた内容の一部です。
施設内の研修の場でも、「暮らしの継続」という言葉が、聞こえるようになってきました。
「ユニットケアについて、もう一度学び直し、一歩ずつでも進めていこう。」そんな流れが出てきたように感じます。

さて、会議があった日の前後数日のことです。

数日前から大きな空っぽの水槽が、職員通用口の片隅に置いてあり、「金魚でも飼うのかな? そういえば、この施設で、生き物を飼ったことがないな。」と、気になっていました。

会議の翌日、出勤すると、水槽は職員通用口の通路にはありませんでした。
仕事中、所用で事務所に向かうと、施設のエントランスに、水のたっぷり入った水槽が設置されていました。
水槽の前で、ケアマネのI職員、介護サービス係のM係長、ごく最近入居されたK様が、和やかな様子で話をされていました。
水槽の中で泳いでいるのは、意外にもメダカでした。
K様はメダカを見ながら、「エアーがあって、メダカも威勢がいいね。」と、餌のボトルを手に握りながら、嬉しそうにされていました。

K様は、自宅でメダカを飼っていたそうですが、ここに入居する際、メダカをそのままにしてしまうのが、とても心残りだったそうです。
そんなK様の気持ちを知った職員が、水槽の寄付を募り、K様の自宅からメダカを連れてきたとのことでした。

その後、K様のユニットに伺って、改めてK様にご挨拶しました。
K様は、「メダカは“シロメダカ”というのかな。いっとき、ブームになったみたいですよ。」、「布袋草を入れるとね、根っこのほうに卵を産むんですよ。今いるのは、去年卵からかえったやつだね。」等、色々と教えてくださいました。

“暮らしの継続“
最初は、明るいニュースを見たように思いましたが、良く考えてみますと、「極々当たり前の事。」なんですよね。
勤務が終わって、水槽のメダカのことを思い出しながら、ホッとするような思いと共に、「仕事が、日々の対応に追われるだけになっていないか!?」と、自戒の念が、頭をよぎります。

ケアコート武蔵野に、おそらく初めてやってきた生き物。
おそらく「シロメダカ」。大切に、飼って行きたいと思います。

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