介護の一工夫
ケアコート日誌

起き上がりシーツ

令和2年ですね。今年もできる範囲で、“ケアコート日誌”を更新して行きたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

昨年の“ケアコート日誌”の中で、「風鈴づくり」、「食欲の秋」のページは、他ユニットのユニットリーダーが書いてくれたものです。
今年も、面白そうな取り組み、良い刺激になりそうな工夫・・・等にスポットを当てて参りたいと考えております。
また、極めて少数でございますが、「ケアコート日誌見てます。いいですね!」との声も頂いております。
皆々様、お粗末ではございますが、時折こちらのページを覘いて見て下さいね。(^^♪

さて、今回のお題は「起き上がりシーツ」です。
これは、入居者様がベッドから起き上がる時に、起き上がり動作を補助するものです。

これを考えたキッカケは、他の職員との会話でした。

他職員
「入居者のM様って、ベッドから起きる時、全介助に近いですよね。M様は、できることは自分でやりたいと考えている人だけど、ベッドからの起き上がりは難しいですよね?!」
私(YABU)
「確かに・・・ほぼ全介助ですよね。仕方ないと思いますよ。」

M様は、体格のしっかりした方で、車椅子を自走したり、立ち上がりも可能です。
ただ、体の痛みがあるため、起き上がりの際は、ほぼ全介助でした。
ご本人が、ベッドから起き上がろうとする時は、ご自分でベッド柵を持ち、懸命に起きようとされるのですが、一人では起きられませんでした。また、体に痛みもあるため、そちらへの配慮も兼ねて、全介助となっておりました。
職員が起き上がりの介助に入りますと、M様は「すいませんね」と、その都度おっしゃっておりました。

そんな中、ある時フッと、M様のお姿と、雑談の中でM様が話された言葉を思い出しました。それは、「私はまだ、いろいろ諦めたくないんです。」という言葉でした。

私(YABU)は、思い付きで、まず左の写真の様に、ベッドの足側、木の部分に、細く折りたたんだシーツを結んでみました。そして、右の写真の様に、シーツのもう一方の端も結んで玉状にしました。

起き上がる時はまず、両足をベッドから前方に移動します。
そして、降り口側の腕は、肘をついて起きる態勢、若しくは柵をつかめるようなら掴んでもらいます。
降り口に遠い方の手で、このシーツを持ってもらいます。
強く引っ張る必要はなく、軽く持ってもらうという位でも大丈夫です。
起き上がりの際、介助者は、今までと同じように背中から肩あたりを支えながら(補助しながら)起きて頂きます。

これを試しにやってみますと、介助者は力を使わなくても良い事が分かりました。
今までは、介助者もそれなりに力を入れて介助していましたが、この「起き上がりシーツ」のお陰で、介助者はあまり力を使わずに、両者が呼吸を合わせれば、自然な感じで一緒に起き上がる事できるようになりました。

数日後、M様のナースコールで訪室すると、すでに自力でベッドから起き上がっている姿がありました。
M様の起き上がりが自立できたのは、“このシーツを使った起き上がりの反復練習でコツを掴まれた?”、又は“この度の関わりがきっかけとなって、意欲が増し行動にも変化が現れた?”、可能性としてはこのどちらかだと思いますが、正解は私には分かりません。

しかし、私はこの事を通して、「我々介護職は、入居者様に対して、“この方は自力で起きられない人”とか、“介助が必要な方だ”と、決めつけてしまいがちですが、介助の場面で起きている事象の原因は、入居者様だけにあるのでなく、職員を含めた相互的な事なのだ。相互的である以上、私たち介護側も改善ための鍵を持っているのだ。」という当然のことを、改めて理解することができた思います。

職員のことを気遣って下さるM様。
M様は、職員に手間をかけさせまいと、無理をしている可能性もあります。
M様に、「もう暫らく“起き上がりシーツ”を使ってみられてはどうか。」と提案した所、「体の痛みがなく、起きれそうな時は自分で起き、痛みや疲れがあるときは、無理せず職員を呼ぶ。」と、仰って下さいました。

この度の一連のやり取りを通して、M様と私たち職員との関係が、別の段階にステップアップしたように感じました。
今後は、“身体の痛みが増してしまう”というマイナスの可能性も考慮しながら、経過を見て行きたいと考えております。

この度も、最期までお読み下さりありがとうございました。

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