介護の一工夫
ケアコート日誌

とにかくやってみる

車椅子のシーティングって、難しいことがありますよね。
ご本人に合わせて、モジュラータイプの車椅子を購入したけれど、使っているうちに合わなくなってしまう、なんてこともあります。調整が必要だけど、どうしたら良いのか?
今回は、かなり思い切って車いすを調整したお話しです。

今回取り上げる入居者の方は、基本姿勢が、疾患等により、左図のような“すっこけ姿勢”となってしまう方となります。
これまでに、普通の車椅子が合わなくなり、リクライニング車椅子を購入した経緯があります。
しかし、フットレストに足が乗らなくなった為、フットレストを含むレッグサポート部分を両方外し、手作りの足台に、両足を乗せて頂くようにして対応しておりました。

しかし、座面の奥行が短く、ご本人が動かれるたびに、お尻が前方にずれてしまっていました。足も、足台に乗ったり乗らなかったりしていた為、その都度、座り直しと調整を行っていましたが、ずり落ちてしまいそうになることが度々あり、危険な状況でした。

機能訓練指導員に相談したこともありますが、改善策はなかなか見出せず、そうこうするうちに、ずり落ちしそうな頻度も多くなり、皆が頭を悩ませていました。

そして「何とかしなくては」ということで、考えた策が次の2点です。

  1. 座面の奥行を何とかして長くする。
  2. 足台が合わなくなってきていたので、足台は使わないようにし、発想を変え、ふくらはぎの部分にクッションが当たるようにして、両下肢を面で支えようにする。

そして、車いすを調整した結果が下の写真です。

上の左の写真は、座面の奥行を伸ばす為のクッションの様なものです。

例えば、車椅子の座面の上に、座面より長いクッションを置いたとしても、座面からはみだした部分は底に支えがない為、身体を支える事ができません。
そこで、木の板と段ボールをT字に組み、T字の横棒部分を正方形のクッションを半分に切ったものでサンドイッチしてみました。(写真の、星形のカバーをかぶせた部分)
これを車いすの座面に置き、その上に座面クッションを乗せて使用する事にしました。

上の右の写真は、ふくらはぎを支える土台になる部分を装着した写真です。
青いマジックテープ付きのもの〔①〕は倉庫に眠っていた物で、その下の黒いベルト〔②〕は、廃棄寸前の車椅子からマジックテープ付のベルトを取り外した物で、結束バンドで固定しています。
車いすはリクライニング状態で使用するため、フットレスト自体は跳ね上げておきます。
この土台の上に、折り畳んだベッドパットとクッションをのせると、下の写真のようになります。

ちょっと、大胆な仕様になりました。
フットレスト部分のオレンジのクッションは、元々座面に敷いてあったクッションです。この様な仕様変更により、下肢全体を面で支えられるようになり、座面の奥行も確保する事ができました。
クッション等の微調整は日々行っておりますが、以前のような極端なずり落ちはなくなりました。

将来的には、車椅子自体の変更を考えなくてはなりませんが、とりあえずは、変化していく入居者様の直近の状態に合わる事が出来たと思います。

介護職は、福祉用具に関する専門的な知識はありませんので、既製品の車いすに手を加えることや、カスタマイズした車いすの管理と管理を継続して行く事を考えると、このような思い切った仕様変更には、躊躇しがちです。

しかし、入居者様の日々の生活に一番長く接しているのは私たち介護職です。
「やるときはやる」、「とにかくやってみる」、「ないものは作る」ということが、必要な場面もあると感じる、今日この頃です。

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