介護の一工夫
ケアコート日誌

にわかに植物記

『みょうがのばか』って知ってる? 施設周りを散歩していて、みょうがを見つけた入居者様が、みょうがの話を教えてくれました。みょうがの宿という昔話や、落語もあるのですね。お話しながら、そう言えば聞いたことあるな、と思い出しつつ。
散歩して眺めてみたり、窓から見える周りの風景。植えた花があり、いつの間にか根付いた草があり、ときどき野鳥もやって来ます。場所によっては富士山を拝めることもできますv(*^^)v今回は、施設周囲の植物のことを少し書いてみます。

ある午後のリビングにて。
「なんだ、楽しくないじゃない」そう言って、部屋に帰ってしまったのはYさんでした。せっかくリビングに来られたのですが、その時は、お話相手も見つからず、職員も介助中で、そうこうするうちに「楽しくない」と。
そんな時も・・・あります。
Yさんは、体調のいいときお話したり、散歩したり、とりわけ植物がとても好きな方。夕方近くになり、ユニット職員にも少し余裕ができました。先ほどの様子を知っていたので、職員同士協力しつつ、Yさんを散歩に誘ってみました。「えっ」という感じでしたが「行くわよ」と笑顔で即答。

一緒に外に出ると、「もう、私は植物に目がないのよ」と仰り、花壇をご覧になっていました。

花壇の脇に小さな球根が置いてあるのを見つけて「これはダリアね」と。すぐに言葉が出てくるところ、色々育てた経験・知識のある方なんだなあ、と改めて思いました。
私には、芋の苗みたいに見えましたが、全然ちがった(‘◇’)ゞ
歩きながら、これはみょうがだね、みょうがのばか、なんて言ってね・・・と色々教えてくれます。
私なんかは、咲いている花に目がいってしまうのですが、私が素通りしてしまう目立たない草にも目が留まって、立ち止まって。

「これはもちぐさね」(写真右側。左はみょうが)
思い出すことも様々のようです。もちぐさは昔、家でおそばにするときに取ってきて、茹でて混ぜると、とてもおいしいとのこと。
また、落ちている葉を見て、「これはあかめかな。」いい肥料になるのよ、お米屋さんにぬかをもらって、混ぜて、腐葉土にして。よく作ったわ、とお話も尽きない様子で。
施設周辺が大自然に囲まれているわけではないのですが、馴染みのあるものが、ここに、今もあるようです。
お話のなかで、その方の豊かな世界が垣間見えたようにも思いましたが、当然、知らないことは山ほど。その方の苦労、過ごした時代、様々なこと。
根ほり葉ほり聞くようなことではないのですが、仕事として、一人のスタッフとして関わりながら、知るようにして知っていく、そんな感じがしました。

こちらは、シラン、というそうです。
「白もあるけど、紫は強いのよ。仏様にあげるとき、今日はこれしかないけど、ってこの花をあげたわ。生け花にしてもいいのよ、ああ飽きないわ。」とYさん。一緒に散歩しながら、帰ったらあれをしなきゃこれをしなきゃ、ということを全く考えないわけではないですが、これはこれで、自身もいいな、と思える時間。
Yさんの暮らしてきた時間は、身近な植物・草花とつながっていて、今もここで、そうした暮らしの思い出とつながることができる。
人と人との関わりが、ことさら大事に感じられる場面もあるし、そうしたこととはまた別に、いつの間にか生えた野草のひと草のほうが、大きな慰め、癒しになることもあるのかも知れません。
コロナ禍のなか、淡々と施設での生活は続いていて、思うようにいかないストレスを分け合うようなこともありますが・・・大きなことでなくとも、ほんの少し外に出る、ほんの少しまわりに目を向けるだけでも、その方の暮らし、大切な時間と、繋がれるようなものがあるのだな、と感じさせられた散歩でもありました。

おまけに。左の花、右は意外な訪問者、何だかわかります?
桜も散って5月になりましたが、今年は肌寒い日があったり、雨が多かったりですね。これから梅雨、そして暑くなります。どうぞ体調に気を付けてお過ごしください。最後までお読み頂きありがとうございました。

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