「I´ll be your daddy,your brother, your lover,and little boy……」
介護の仕事をしていて、たまにこの歌詞が、頭で鳴る。鳴るわけではないけれど、よぎる、ことがあります。ミスター・ビッグというバンドの、思い切りのいいロック。マキタの電気ドリルを、ピックがわりに弾くポール・ギルバート。浮かんで……来ませんかね。当然、好み、世代がありますから、ピンと来ない方もいると思います。自分が高校生の頃だと思います。
歌詞は「何にでもなるよ、兄弟にも、恋人にも、望むように。」そんな感じでした。
たしかに仕事の中で、歌詞のような場面……誰かにとっての息子さん(娘さん)であったり、自分がいるという環境が、その方にとってささやかでも、大事な何かであったりということはあるのではないでしょうか。その方のためを思い何かしらの役割を演じた、といような経験が。
介護は、それを複数の入居者様に対して同時進行で変容させていくことでもあり、それをいとも自然に行っていく、繊細な仕事でもあると感じることがあります。よく自分でもやっているな、みんなもすごいな、と思うときがあります。
それと同時に、自分の接し方や言葉使いによっては、自分がいることでその人にとっての大事な何かを奪ってしまうことにもなる。ご本人にとっては苦痛でしかなかったり、尊厳を奪ってしまうことにもなりうる。
施設では、丁度新年で、職員個人の目標、ユニットの目標を設定しようとしているところ。再度、入居者様の権利擁護、という大事なことを見直そう、それを踏まえた目標を考えてください、というアナウンスがありました。
わたしは仕事のなかで、その方の食事量を記入する。飲んだ水分量を記入する。夜は定時に巡回して、覚醒されていたか、入眠されていたかをPCに打ち込む。それは仕事の一部ですが、そんな中で、「人」をただの対象として見てしまうような、尊厳のまるごと抜けた対象「物」として見慣れてしまうような危うさもはらんでいる。
例えば、全く介護経験のない人が、ボランティアとしてユニットに来る。すると入居者様が生き生きと自然に笑って話している。「ああ、自分は最近こんなふうに話すことができただろうか」と思い知らされる。これは、ケアコートでの話ではありませんが、そんなことが自分にもあります。
今、自覚できないでいることがあるかも知れない。『権利擁護』というものとあいまって、職員自身のセルフケア、働く環境というのも大切だと思います。職員同士の関係、職員と入居者様の関係、ユニットでは、決して広範ではない、持続する人の関係が営まれていて、いつもすべてがうまくいくとは限らない。自分でどうにかできる部分と、そうでない部分。でも、頑張ればどうにかできる部分さえ、ないがしろにしていないだろうか。自分ではどうにもできないが、投げかけてみることで、何かが変わることもある。それさえせずに平然とこんなもんだとあきらめる。それで面白いか。
自分を保つ、こうありたいと願う自分から離れてしまわないように、問い、整え、働く。それでも、言うようにはうまくできない。自分は、ずれてしまいやすく弱い面があると自覚しながら、日々行う介護というのは、なかなかの修行だな、とよく思います。
今、行われていることが、決して正解というわけではない。
夜間の巡回も、自分だったら、入ってきてほしくないな、と施設介護を経験した最初の頃に思ったことがあります。でも、なかには、深夜の巡回でお話して安心した、と話す方もいる。巡回することで、身体的な怪我のリスクを回避できることもある。あまり気にしない方もいるだろうし、本当は入ってほしくないな、と思いながら目を閉じている人もいるかも知れない。一人ひとり意味合いが違っていたりする。結局、定時で巡回するわけですが、最初の頃に思った気持ちは、片隅にでも、覚えておきたい。決して経験が長いことがプラスに働くわけではない。慣れてしまう怖さ、というのがある。
そして、このケアコート日誌で、何度か同じことを書いてしまっていると思いますが、私は、家族ではない。でも、「そばにいる人」。
「I´ll be your daddy, your brother, your lover,and little boy……」
わたしは父ではないし、父にはなれない。兄弟にはなれない、恋人でもない、小さな坊やでもない、でも、そばにいる。人として。場面場面で、たしかにわたしは変容している。何のために?こたえはその時々で、違っていたりする。自分がどう思うか、の前に人がいる。
個人の目標を考えながら、何かつれづれと書いてしまいました。
写真は、施設の玄関前。新年の様子。
皆様の一年が健やかに、良い一年になりますように。
読みづらい部分もあったかと思いますが、お読みいただき、ありがとうございました。
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